VoIPサービスは一般加入電話と置き換え可能か?

2000年代から普及が進み、現在では一般に定着しているVoIPサービスであるが
格安に通話が出来、通話品質も一般加入電話とほぼ遜色がない…と考えると、今や技術としてはレガシーとなった
一般加入電話、特に固定電話回線は今後使われなくなるのか? といった話も持ち上がるだろう。
本記事では、VoIPサービスの特性から、一般加入電話をVoIPに置き換える事は可能かを述べてゆく。

□セキュリティ問題
現在のVoIPでは、多くのサービスでSIPプロトコルが使用されているが
このSIPは、レガシーなhttp等と同様に標準では暗号化に対応していない。
つまり、IP網上でのやり取りが基本的に平文で行われるわけであり、セキュリティを確保した
通話を行いたいといったニーズには、標準では対応が難しい現状がある。
送信/受信機器側双方でSIPシグナルを暗号化すれば、この問題には対処出来るが
これにはシグナル暗号化に対応した機器の導入が不可欠であり、導入コストに問題が残る。

□デジタル・ディバイド問題
これは個人向けサービスについての言及だが、IP網を使用するには現状、IP網通信に対応する
PC/スマートフォンデバイスと専用ソフトウェアを用いるか、VoIPゲートウェイを設置しての利用形態しか存在しない。
いずれも、一般加入電話のような「電話線を挿せばとにかく通話が出来る」といったシンプルさには欠ける。

この問題は、特に高齢者などITデバイスの操作に不慣れなユーザに対しての
普及の妨げとなると考える。
これが仮に、見た目は普通の携帯電話だが通話は全てLTE回線を通じてIP網だけに接続する
VoIP専用携帯電話といったデバイスが登場してくれば状況は変わるであろうが、現状では
一部のキャリア/機種でVoLTEの展開が始められているに留まっており、サービスが標準化されているとは言い難い。
また、過疎地・山間・離島など、VoIPを提供するだけの回線帯域が確保出来ない地域では
引き続き一般加入電話を使用するしか選択肢がないのも現状である。

□災害時の対応
110や119といった緊急通報を一般加入電話からダイヤルすると、発信先の住所を元に最寄または管轄の緊急通報センターに
自動的に繋がる仕組みになっている。
ところが、IP網から発信するVoIPでは、発信元の住所が特定できない為標準では緊急通報をVoIPからダイヤルすることは出来ない。
また、地域停電が発生した場合、一般加入電話の場合は電話線を通じて通話に必要な電流が供給される為
(電話局が無事ならば)停電でも通話が可能だが、特にVoIPゲートウェイを設置している環境の場合
ゲートウェイへの電流供給が途切れてしまうと通話は不能となってしまう。
災害時の通話インフラとしては弱点を抱えている、と言えよう。

□まとめ
これらの観点から、利用者自体は今後減少するものの一般加入電話は
完全にはVoIPサービスへの置き換えは難しいであろう、と結論付ける。
もっとも、特にセキュリティ問題は近年、利用料はやや割高ながらビジネス用途向けに
通話データの暗号化を施して通話を行うサービス提供も開始されていることから、
「格安・セキュリティ低」「割高・セキュリティ高」といったVoIPサービス側の2極化が進むであろう、とも予想される。
このうち前者のサービスは、個人向け一般加入電話と引き続きシナジーが競合することから
特に個人向けサービスにおいては、VoIPサービスがいずれデファクトスタンダードとなる日も遠くはないかもしれない。

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